スペイン人礼賛

あれは3月下旬のこと。
スペインのカタルーニャ地方の地中海岸沿いは「コスタブラバCOSTA BRAVA」と呼ばれる。スペインには他にも美しい海岸で有名な「コスタ〜」がいくつかあるが、このコスタブラバも相当に美しい。それも日本人好み(私ごのみ?)の複雑に入り組んだ海岸線が続き、別荘や小さな入り江、松・・例えると松島海岸(行ったことありません)に沖縄の海の色を配色した感じのところが多い。
ジローナGIRONAの旧市街に部屋を借り、最後の1週間をのんびり過していたのだが、さすがにそろそろ海岸線や山の方に遠出がしたくなった。EMPURIESというあまり知られていないが素晴らしい遺跡、私の乏しい英語で説明を読む限りではギリシャ時代とローマ時代の遺跡が両方残っている、などを見学。周囲の海も丘もたいへん美しくため息がでます。長かったラテン系主要3カ国への出陣を終え、ここ30年欠かさず見てきた(はずの)地元の街の桜はまだ散らずに残っているかな〜などと余計なことなど考えながら小さな入り江などを回る。私のお気に入りはSA TUNAというたいへん小さな入り江だが、今回初めて行ってみたLESTARIT。真正面に美しい島が見える、海水浴場のよう。すっかり右側通行にも慣れ(ってこの話題には全然関係ないか)、道路からそのまま浜辺の駐車場に乗り入れる。
 と、ここまでは別になんでもなかったのだが・・。すっかり正面の美しい島の眺めに目を奪われていた(もう2ヶ月もすれば全く違うものに目を奪われていた可能性もありますが、それが何かは・・・)私はその前方に広がる波打際まで車で入れることに気が付いた(というより実際には無意識にそこまで乗り入れていたのだが)。後でよく考えれば、舗装道路から締まった砂で整備された駐車スペースと、単なる砂浜との違いは明瞭だったはずなのだが、少しでも近くで、いいアングルからこの美しい眺めを見る、それも車の中からそのまま見るのがいいな〜、ということしか頭になかったのだろう、その微妙に車1台やっと通れる境目を踏み越えていった。
 最初の35メートルはあまり違和感がなかった。
38メートルいったところで、ふと車輪のグリップに違和感を感じた。
 少しスピードを落としてみると、何だか微かに(本能的に)イヤーな雰囲気を感じた。
少しハンドルを切ってみて、これが夢なら早くさめて欲しいと願っていた。
 39メートル50センチの地点でついに前輪が「激しく」空回りし始めた。
「今は土曜日の夕方、ここは湘南海岸でも三浦海岸でもなくスペインだ。しかも季節外れの、雨上がりの海辺で人影もまばらだ。レンタカーを返し飛行機にのるまでには幸いまだ2日ある。英語はほとんど通じない。じゃ日本語が通じたり・・しない。ドイツ語では(あ〜う〜)くらい言えてもスペイン語では(あ〜)くらいしか言えない。でももしかしてカタラン語が話せるのかもしれな〜くない。」

(続く)

ここでいつもの問題です。それも本文の主題とはほとんど関係ない部分からの出題、という回答者泣かせ?(というより出題する価値があにという話もありますが)

1.文中で「もう2ヶ月もすれば全く違うものに目を奪われ ていた可能性もありますが、それが何かは・」とは何でし ょう。
2.本文中最後のほうの状況で筆者が知っていたのは何か。複数回答可。
 ①多摩地区からJAFに来てもらった場合の総費用と自己負担額の円額、ユーロ額。
 ②車の後部スペースに牽引用のロープ(ドイツ、スペイン、イタリア、フランス4国の道路交通法基準を満たすも の)が格納されていること。
 ③こういうときのために!ちゃんとデイバッグのなかにはMY ROPEが入っていること、及びその先見の明の  素晴らしさ。
 ④今日の夕食の献立。
 ⑤地元の大通りの桜がすでに3分咲きだったこと。
 ⑥年間3400人が、スペインの浜辺で立ち往生した車中で強盗に襲われ、うち28人が死亡していること。
3.ここまでの本文を読んであなたが思い浮かべなければならない四文字熟語、慣用句はどれか。(複数回答及び回 答拒否可)
 ①注意一秒事故一生
 ②虎穴に入らずんば虎子を得ず
 ③虎穴に入らずんば孤児になる
 ④油断大敵火事親父
 ⑤油断大敵
 ⑥郷に入っては郷に従え
 ⑦砂のうえにも2日
 ⑧呆然自失
 ⑨飲むなら乗るな、乗るなら飲むな
 ⑩在欲先達
4.この本文は結局そういう展開になるのでしょうか?


さて。。。
 さすがに最近この手の経験はないが、スタックした車輪は回すほど砂浜に深く沈んでいくのもわかり、自力脱出を諦める。とはいえ一応、非力ながらも一人で押してみたりするが動くはずもない。
こういうときに言葉がほとんど話せないのは辛い、が正直に言えばここで私が日本語並みにペラペラとカタラン語やらスペイン語を話せたとしたら・・・場合によっては大層な出費と時間をかけてJAFのようなサービスを利用することになった可能性もある。
 「誰にどう頼むか」それこそそれが私の最大の関心事となる。英語のできそうな人・・とも思うが良く考えると私の英語力では「現在の車の状況」を言葉だけで説明することさえ難しい。人と車はときどき見えるので、落ち着いてよーく考える、持ち時間は90分以上あるのだ。
 10分のうちにだいたい以下のような人や動物が目に入ったなかで、私が「満を持して」声をかけた人は果たして・・・。
①乗用車に乗った若いカップ
②年配のおじさん
③バンにのったお兄さん2人
④砂浜で遊んでいる女の子
⑤沖合いを飛んでいる鳥
⑥自分



 そう、これがすらすら解けるようならあなたはどこへ行っても大丈夫です。(?)
 迷わず沖の鳥たちではなく、バンに乗ったお兄さんに走り寄る。お腹を減らした野良犬が、人に擦り寄るときの気持ちは多分こんな感じなのだろう・・・。
 「@@@@@、@@@@、@@@@@@@」と話かけ、幸い「実物」が遠くに見えているので状況を理解してもらいやすい。スペイン語で多分「それならJAFに連絡して車を呼ばないとね〜」とか何とかおっしゃっているようにも聞えたが(そんな都合の悪いことは理解できないのが言葉のできない強み?で)「大変申し訳ないのですが、そこを何とか・・、車を見るだけでも何とか・・・おねがいします・・困っているんですよ〜ん」という思いを込めて「@@@、@@@@@、@@@@」。
 すると「それもそうだな〜」と相棒を見やると素早くダンボールのようなものを後部から取り出し、現場へ同行してくれた。そのまま「ちゅうちょなく」私の(一応借り物ですが)車の前輪下にもぐりこみ、砂を「ためらいもなく」素手で掘り出して・・・。(かなり感激している私)。で「じゃあエンジンかけてバックしてみて」というので(これは何語だったのでしょうね??)
 彼等2人が押してくれるタイミングにあわせてバックでアクセルを踏むが・・・。「ズルズルズル・・」というむなしい音とともに前輪は砂を吐き出すばかり。一人が交代して私も押し役になったがダメ。。。
「@@@、@@@@@?」
「@@@@、@@@」
「牽引のロープは積んでるの?」
「う〜ん、レンタカーだし見たこともないから多分無いですよ」彼らの服も手も砂まみれだ。やはりダメか・・・。あとは彼らにスペイン版JAFかレンタカー会社に電話してもらうところまで頼めるかな〜これだけしてもらって十分感謝してるけど。。。
 彼らもちょっとこれは手に負えないな〜と思い始めた頃。。。舗装道のほうから一台の車が向かってくる。
「@@@@@@@@@?」
「お〜いそんなとこで何やってんだよカルロス(仮名)、パブロ(仮名です)?」
「なになに、この日本人が車で砂浜に乗り入れちゃってさ〜手伝ってんだよミゲール(仮名。」
「お〜そうかどれどれちょっと見せてみな」さっそく彼も私の(借物の)車の下にもぐりこみ様子を見始める・・・。あ〜まだ何とかなるかもしれない・・・。(何とかよろしくお願いします、みなさ〜ん)
 とそこへ「プップ〜」とホーンを慣らしてもう一台車が・・。お〜これはあきらかにオフロードでもどこでもガンガン走れそうな車高の高い4WDだ。「@@@@、@@@@@?」
「お〜い、みんなそろって何やってんだよ、何だか楽しそうじゃないか、(俺も仲間に入れろよ〜)」とペドロ(仮名)がそのまま(頼もし〜い)(ほおずりしたくなるような)車で浜まで乗り入れてくる。
(私の期待度がここに来て急激にアップ)
「@@@@、@@@??」「へーいお兄さん、牽引のロープは積んでるだろう?」
「いや、その、あの、レンタカーなので、すいません、ぼそぼそぼそ・・」
「何言ってっかよくわかんないけどどれどれ見してみ〜」とペドロが手馴れた手つきでトランクルームのスペアタイヤのあたりを開けて調べてくれる。そしてすぐさま車体後部にもぐりこみ(ちゅちょなく!)牽引ロープを引っ掛ける金具を探っている。
「@@@@、@@@@@@」2分後にようやく見つかったらしく、すぐさま自分の車から(迷わず)牽引ロープを取り出してきた。「牽引ロープ」・・・○金井の運転免許センターでその言葉を習った以来縁もゆかりもなかった「牽引ロープ」。今まで軽んじててゴメンナサイ。
 そして2分後、動いた!バックで間違っても2度とずぶずぶ沈まない本当の駐車場まで引っ張ってもらい、全身に安堵感と脱力感が走る。カルロス、パブロ、ドミンゴ、ゴメス、ミランダ、セルジョ(あれなんだか名前が違うかな・・)みんなにひたすらムチャスグラシアスとか何とか思いつくかぎりの感謝の言葉をのべ、日本人得意のペコペコお辞儀を多発。
 「OK、OK今度は気をつけろよな〜」「どうせなら今度は魚でも釣らないとな〜ははは」「それじゃ気をつけてね」・・・。

 三々五々彼らが自分たちの車に戻り、去っていく。後になってせめて名前や連絡先でもきいておけば・・・と思いました。スペイン語だって辞書をひけば多少は書けるだろうに。そして一人砂浜に取り残されて(何だかそんな気分になりました)しみじみと思ったことは。逆の立場だったときにいったい私はあんなに「ちゅうちょなく」困った外国人を砂まみれになって助けて上げられるのだろうか、ということ。
「できません、今の私には」。これから少しでも彼等のあの行動を見習って、同じことができなくても今より少しは困った人をちゅうちょなく助けたり手伝ったりしてあげなくては・・・・という思いと、それにしても何てカタルニア人って(スペイン人って)(具体的には彼等は)素晴らしいのだろうと・・・。
そんなわけでこれを機に困ってる外国人を見かけたら助けてあげるようにしよう、と思いました。それもまずはスペインの人優先(?)でね〜。


 そこでスペイン人への恩返し・・。思い出しました。正確には「恩返し」したのではなく、なぜだか知らぬ間にささやかな「恩返し」をしていたようなのです。その例を2つほど・・・。

 話は今年の春に戻り(進み?)、「砂浜」のあるカタルニア地方でのお気に入りの街GIRONA。そうここに1週間滞在していた私は朝食・夕食は大体パスタを茹で(茹でたついでにそれを食べ)ワイン(もちろん?赤のリオハです)にチーズにサラダに生ハムなどで済ませ、(円所有者の悲しいところで)割安感のある(といってもグラスワインにコーヒーを頼んで2,500円也)ランチメニューを利用してお昼をレストランで取る、という基本パターンで過していた。
 この辺りでは料理のレベルはかなり高いのでどこでもはずれはない。3日目頃に入った、旧市街の目抜き通り(このあたりにアームストロングが住んでいたのですね〜)にあるレストランがなかなか良く、翌日も通う。一人だけ日本人ととても似ているウエイトレスさんがいて思わず16日間利用しなかったため忘れかけていた日本語の復習ができるかと思ったが、どうやら日本語のできない中国の人でした。しかし・・・この人がすごく似ているのです。そう誰だっけあの、最近はすっかり見ないが10年くらい前にはかなり有名だったあの・・あの・・・?う〜ん思い出せない。本人に言おうにも、周りの人に同意を得ようにも・・知るわけもないもどかしさ。その後一瞬帰国前にそのアイドルの名前を思い出したのですが、今もまた忘れてます。早稲田大学に入学したものの、あまり授業に出ず話題になったことだけしか記憶がないのですが、どなたかアイドルに詳しい方知ってたら教えてください。
 まあ昔のとはいえ、本当にそのアイドルにそっくりな彼女は当然ながら結構かわいい感じなので、2回目に来たアジア人の私に気付いてくれたようで悪い気はしない。で。え〜と「恩返し」でしたね、テーマは。
 赤のグラスワインにネグロパエジャもおいしくややご機嫌の私の隣に、年配のご夫妻が座っている。通常ヨーロッパでは他人の会話はほとんどバックグランドミュージック(たまに聞いたことのあるフレーズがあります)ののだが、何だか意味がわかるぞこの人達の会話・・おおENGLISHではないか。ということでややご機嫌な私は彼等に邪魔にならない程度に話しかけ、英国人ご夫妻とGENTLEな会話を少し楽しんだ。(つもり)食後のエスプレッソを飲んでいると隣ではご夫妻が「英語で」例の彼女にコーヒーを注文しているのだが、なぜか通じずお互いに困っているようだ。英語では「あ〜う〜ABCD」位なら話せる私から見ると、ネイティブなご夫妻と私の英語での注文を問題なくこなしてくれる彼女との間でコーヒーの注文に支障があることが不思議でならない。が、困ったような彼女(と、ご夫婦)を見るに見かねていた私に、ちょど彼女が(そういえば)というように私に少し困ったような笑顔で「すいませんが英語を話せますね?」と(多分英語で、ですよね)聞いてきた。「えぇ〜あまりうまくはないですが・・」。で要は私がご夫妻に希望を聞き、それを彼女にスペイン語で(というよりスペインではこんな感じで頼めばエスプレッソが出てくる、という単語などで)注文をしてあげると、「ああわかりました、ありがとうございます」とうれしそうに感謝されたのでした。もちろん英国人夫妻からも上品な言葉で感謝されて。聞いてみるとすでに(私同様)リタイヤしている彼らは南仏のツールーズに長く住んでいるらしいのだ。
 う〜ん、なぜ私が彼等と彼女の間で通じない注文を通じさせられるのか、というよりなぜ通じなかったのかが今ひとつ腑に落ちないのですが、「無事おいしいエスプレッソが飲め、午後のくつろいだひとときを過せるフランス在住イギリス人」と「注文の意味がわからず困惑の表情を浮かべていたスペイン在住中国人の彼女に、再び素敵な笑顔と安堵とを取り戻せたこと」。スペインカタルーニヤ地方での文化交流及び観光事業発展に貢献したのでした、たいへんささやかながら・・・。

 
 そんなジローナ(スペイン語の発音ではヘローナが近いらしいのですが、地元カタラン語ではジローナ、個人的にもヘローナではさえなさすぎなので)では夜遅くまでバルがにぎわっているので、歩いて1分でその辺りにいける私は自家製パスタやワインに生ハムなどで既に満腹、十分飲んでいても出かけなくてはなりません。3日ほど続けて通ったので、カウンターのお兄さんとお姉さん(昨年のウインブルドンで優勝したフランス人選手にそっくりで、本人か双子姉妹かもしれません)とも少し顔なじみになった私は若者や家族連れで混雑するカウンターでつまみとワインを注文。ほとんど周りは地元の人が多いようだが、さっき入ってきた4人位の家族連れの会話が何となく聞えてくるぞ〜ということは・・そう英語でした。イギリス人かと思ったら、パパはカナダの大学教授、息子はアイルランドで働いているらしくなぜか不似合いに(ここだから書けますね。読んでませんよね?読めませんよね、日本語??)美しい彼女を連れて・・。
 教授があなたは英語が話せますね?というので「えぇ(知人のO君やI君やS君ほどは全然話せませんが)少しなら(でも日本語はペラペラなんですよ)」と言うと、「じゃすまないが、ここの注文の仕方を教えてくれないかな?さっぱりわからないんだよ」というではないか。お〜っとこんあことがいつかもあったよな(前例参照)と思いつつ簡潔に教示さしあげました。「こういうところで立って飲むなら、つまみは指差してカウンター越しに注文、飲み物も同様。支払いは引き換えに払ってもいいけどみいなさん大体帰るときに自己申告、一応グラスや皿やつまようじの数で確認取り合っていますね」
 そうここでも私はカタルーニャ地方におけるカナダ人、アイルランド在住カナダ人、カタルーニャ在住バスク人の文化交流及び観光事業推進及び2007年度スペインGDP数値増加に大いに貢献したのでした。

(多分これで終了)

イタリア最新駐車違反情報

免許を取って以来、レッカー移動なんて1回あったかな。路上駐車があたり前のヨーロッパ、よほど悪質でない限りレッカー移動なんてないはず・・・と思っていたのだが。
 3月下旬のフランス国境に近いイタリアの街、ベンチミグーリア。フランス側のコートダジュールをゆっくり回ったので、少しだけイタリア側(通称リビエラ)も見ようかとやって来た。そいえばかなり前にこの街で「銅鍋」を買ったことがあり(別にここで買う意味は無かったが、当時の円リラ相場では驚くほどこういったものが安かった)、泊まるだけの安いホテルも何軒かあるだろうと。一発で手頃な宿を見つけ、すぐ近くの路上に駐車も終了。チェックインを済ませると、大柄なおじさんが下手な英語で(って失礼)なんだか話しかけてくる??あ〜どうやら車の駐車場所について注意をしてくれているようだ。何々、木曜日の夜は海沿いの道路は駐車禁止だ、ここから500メートル先の交差点からはOKだって?ふーんと軽く聞き流したのは、その日が水曜日で1泊だけしかしないつもりだったから。(と大きな声では言えないが、英語を話すこのおじさんが今ひとつ信用できず、なれない英語で曜日とか間違えてるかもしれないしな)翌日朝予定を決め、もう1泊することにして出かける。ふとそういえば今晩が木曜の夜か、あのおじさんが言ってた情報を思い出し多少心に留めて。
 さて、その日いくつかの綺麗な海を堪能した帰路、小さい丘(Poggio峠途中)のうえにあるレストランで夕食にする。簡単にピザとワインで済ませ、結構おいしかったのでもう1枚おじさんに注文、トイレに寄った帰りに店内を何気なく眺めた。壁にいくつかの賞状や新聞記事があり、結構な賞の受賞式やら賞状やらを発見。写真がピザの注文をとってくれた、ちょっとさえないイタリアおじさん(っと失礼)に似ているが・・「あれこの人ってあなたですか?」と聞くとうれしそうに「そうそう俺なんだよ」って。ちょうど英語を話す娘さんがやってきて通訳もしてくれて、10年前とはいえすごい賞であることがわかり、どうりでピザもおいしかった訳だとうなずいていると「でもピザだけはマンマが作るのよ」。「パパの料理はとってもおいしいわよ、見てよ私のこの体??」たしかにお世辞にもスリムではない彼女であった。じゃあ、と2日後に(Milan-Sanremo)この近くに来るので、非常に込むであろうその日のランチを予約してちょっとほくそえみながら静まり返った海辺の街へ。
ワインも効いて後は早く眠るだけ、とそうそう駐車場所か。やはり海外では慎重に行動しないと、ましてやここは一応イタリアだし。(他意はありませんがやはりフランスのほうがちょっとだけ何をするにも安心感があるのは事実です)ちょっと遠いけどっと、宿の前からおじさんの言ってた500メートルほど先からはOKって、ほんとかな、空きスペースを探すが当然ながらそうそう空きスペースがないのが常。やっと駐車。ふと、まてよここだってそもそも路上駐車な訳で安全ではないじゃないか、それならやっぱり10分近く歩くけどさっき通った公園脇のちゃんとしたラインがあるところが空いていたぞ・・・。5分後そちらへ移し、さあこれで何の心配もないぞと部屋へ戻った。
 さて翌朝、予報以上に天気が良く朝はやく目が覚めた。歩いて30秒で美しい海岸線が続いている、せっかくだから朝焼けの海でも見ようと6時前には宿を出る。綺麗な朝焼けを見て、ちょうどに日本にも電話しておこうと、公衆電話へ。しかしこの国では驚きもしないがそうも電話の具合が悪くあきらめる。
で宿の前の海沿いに通りは閉鎖され、市の準備をし始める車がびっしり、なるほどこれじゃあのおじさんの言うとおりだな、こんなところに停めたら完全に撤去されちぇってた訳だ、危ない危ない。このときには何の不安もなかった。まあ海沿いの散歩がてら、あの公園の車の辺まで行ってみようか。それにしても結構大きな市なんだな500メートル以上ずっと道路封鎖してマーケットになるのか・・。こんなとこに停めなくてよかったよな、それにしても。いや〜朝の海辺は気持ちいいね。あ〜ここここ、ここを曲がると公園があって私のFORDFOCUSは・・・??あれ、この道も何だか市の準備が続いているぞ〜まさか??何もない。間違いなく昨日の夜10時頃にはほかにもたくさん停まっていた他の車も何もない。5秒ぐらい、そうその事実を認めたくながっている自分が立ちすくんでいたが。やがて諦めと怒り(っていったい何に怒ればいいのかな)と後悔と情けなさが入り混じったいやーな虚しさにおそわれた・・。
店の支度をしている人に聞いてみようかとも思ったが、しょせんイタリア語では会話が成立しない。経験上こういうときはあわてずに、一番いい方法を選び最短距離で解決までもっていくこと、そうでないと心身ともに疲れ果てることになるのだ。今となってはあの怪しげな英語を話すおっさん、おっととんでもないイタリア紳士が最も頼りになるはずだ。10分前とは全く異なる心持で、それでも貧乏性なのか僅かの慰めになると思ってか、綺麗な海だけは眺めつつ。宿へ戻り、誰もいない早朝のフロントであのおじさんがいてくれることを願いつつ呼ぶと、パンツ1枚の眠そうなおじさんが出てきた。精一杯の笑みをうかべすまなさそうに(って本当にすまなく思っていましたが)、車がやられてしまったんです、駐車違反で・・って。5秒ぐらいして、どうやら事態がわかったおじさん、だからいわんこっちゃ無い俺の言うとおりに何で東側に停めなかったんだ、って間違いなくそういうことを両手を天井にあげて・・。これが他人事なら、絵に書いたようなイタリア人の身振り手振りだななどと一瞬思う間もなく、一生懸命どうしたらいいのか、やはり「レッカー移動(これってニホンゴでしょうかね)されちゃったんでしょうか、車はどこにもってかれちゃったんでしょうか、どの警察にいって・・・次々とこれから運が良くても最低限避けられなし煩雑な手続を想像しつつ、おじさんに通じているかどうかわからないが英語で質問をし、「お願いおじさん」的な表情を全身に表して・・・。(そういえば先日たいへん久しぶりにお会いしたKさんが、Kナダでレッカー移動されてあせったよ、とおっしっていましたね、そのときは甘いな〜私なんかしょっちゅうヨーロッパに行っているけど一回もそんな・・・なんて思ったものでした、これは読んでないですね今も、Kさん?)
30分後、再びさきほどの海沿いの道を歩いている私、すでに人も出始めている。まだ落ち込んではいるもののちらちらと品物にも目が行く。歩いて30分、警察署に到着。あのおじさんは誰か英語を話すだろう、などといっていたが(すいませんやはりイタリア人のこの手の言葉はそのままには取れません)、おお感心、ちょっと落ちつた感じのその警察官は上手な英語を話すではないか。ここに来るまでに「駐車違反」「レッカー移動」「日本だと今いくらぐらいかかるんだ?」「でも盗難にあたわけでなく車は保管してるはずだ」「あとは費用の問題だけだ」と情報を整理、最大損失予算を思い切って多めに設定し、「それ以内で収まればよしとしよう、と決める。ここまでたどりつくと少し余裕が出てくるわけで、難しい顔をしてPCでイロイロ入力しているこのおじさんもイタリア人、何だ仕事が終わればそのへんのBARでビールやワインを飲んでるわけだ、などとよくわからない理由で安心し、○○○ユーロをここで払い、この書類を持ってここにいってそこであと○○○ユーロをそこで払いなさい、とどうやらそういうことになっているようだ。カードでも払えるが数パーセント割高になるらしい。その数パーセントはこの際どうでもいいが、さすがにイタリア警察への罰金支払い履歴はの残したくない気がしたので、迷わず現金で。まあもう少し余裕があれば、カードで払っておいて帰国後、カード会社に「こんな請求全く心当たりがない」などとクレームしてみたらそうなるのかな??まあイタリアへはこれからも何度も行くのでそれは冗談でしかないが。このまま大人しく罰金を払って、というのも何となくしゃくだけど、イタリア語がわからない外国人なんだから大目に見てよと交渉する時間も見込みも、そもそも語学力がないのでその代りに「毎週金曜日はあそこはダメなんですね」「次回は気をつけますよ」などとちょっとイタリア人風(って誰も見てないからわかりませんね)にジェスチェアを入れて挨拶をして立ち去る。
さらに30分後、郊外のちょっとあやしげな(夜ならちょっと歩きたくないような)ところへ到着、どうやらここがそこ(イタリア地方警察公認レッカー移動後の違反駐車車両公認一時保管場所?)らしい。何よりもほっとするのは我が愛車のグレーのFOCUSが間違いなく「あった」から。やれやれとんだ回り道に無駄使いになったが、それでもこうして・・・。ちょっと余裕度が増し、レッカー移動代を半分冗談で「値切って」見たりしたがもちろんあっさり笑われて終わり。まあこんなちょっとした冗談を言えるように自分の気持ちを持っていくのも、長い海外生活(じゃなくて滞在かな)では結構大切なことな訳で。
さて最後に問題です。

本文をよく読んで以下の問いに答えてください。

1.警察に支払った罰金はいくらでしょう。  (配点30)
2.レッカー移動代で業者に払った金額はいくらでしょう。  (配点30)
3.1、2をあわせると、ちょうど私がお土産として買っていこうと思っていたものが買えたのですが(??)それは何だったでしょう。 (配点40)
 ①ベンツAタイプ ②ディオールのショール ③ポルチーニ 2キログラム ④エスプレッソマシーン ⑤「最後の晩餐」年間フリーパス ⑥門さんの嘘つき!

ちなみに私の「日本国免許証」、依然として無事故無違反となっております。

ヨーロッパ最高所の鷲巣村

ここはヨーロッパで最も標高の高いところにある鷲巣村、とガイドブック的には表現されるサンタニェス。この鷲巣村、という日本語の意味は(多分)海を見下ろす断崖(あるいは、のような、ところ)にぽつんと(あるいは、比較的ぽつんと)位置する小さい町や村、となるでしょうか。
 コートダジュールで一番有名なのは皆さんご存知のエズですね。ちなみにエズは大きく分けて3つあって、シュメール、ヴィレジ、コル。順番に海沿い、村、峠。
 (尚、全文通してフランス語の知識は皆無に等しい私の感覚的推定、なのでどなたかフランス語に詳しい方がいたら、是非訂正や修正をお願いします。私にとっても多少のフランス語レベルアップになりますので。)
 某K氏の前の会社などがだしているガイドブック的に有名なのはヴィレジのみ。大体ここが標高400メートル前後、かの有名なニーチェが散策した小道や、おしゃれなお店やらがたくさんあるあたりです。3週間ほどの滞在中、フランクフルトの空港以外で、間違いなく日本人らしき人を目撃してしまった(?)数少ない経験もこのあたりでした。ちなみにニースあたりを歩いていて見かけるアジア人は、8割がた中国系でしょうか。季節柄わずかに卒業旅行らしき日本人もいたような。
 でサンタニェス、日本語表記される機会の少ない村なので今日から日本での表記は「サンタニェス」で決定です。ここが約750メートル、行って驚いたのは本当によくもまあこんなところに・・・。でも結局個人的には結構気にいって、延べ5泊ほどしてきたので、今や見慣れた風景になってしまいました。最寄の街はイタリア国境のメントン。ここからちょうど10キロ、細〜い道を登っていくのが一番判りやすい道なので、結局この道を(懲りもせず)朝夜と10回は走ったことになるようです。(ちなみに車で、です)
 さて、エズ(コル)でレースを見た後(Paris-Nice)、いくつかの宿泊候補地(マティスが暮らしていたバンスのアパート、有名な教会のすぐ隣にある、その教会が運営する宿泊所、どちらも電話がつながらなかったりであきらめて)のなかからここにある数少ないホテルに電話すると英語が通じたのでした。あきらかに乏しい語学力で訳されたと思われる、3行ほどのガイドブックでの紹介に「急坂をのぼるので、運動嫌いな人には無理です」などと、訳した本人が意味がわかっていないしもちろん行ったこともない場合の典型のような、ぎりぎり誤訳じゃないだけの意味不明な文が載っていたので・・。「車でホテルの前まで行けますか?」とおそるおそる(内心だけ)聞いてみると、「何の問題もないよ」とのこと。息つぎするふりをしている間にこの意味するところの幅(まさにその言葉通り〜多少その通り〜まさか??)を判断しなくてはいけない。あの紹介文との整合性も含めて。まあ結論は行って見なければわからないが、スーツケースをかついで10分もあるくようなこともない、だろうと。で、調子にのって(?)今ここにいるからちょっと待っててもらって地図を出して道を確かめたいから、とそのおじさんを電話口で待たせる。さっきまで今日泊まるところ(どこでもよければもちろん困らないのだが、いくつかのこだわりを見たすような宿)に関してやや心細くなっていたのに・・・。で地図上ではどう行くかを理解できたが、もちろん英語で話せるなら念のために道路の番号を順に聞いてみると・・・「そんなの知らないよ〜ん」・・・。しばし無言になったが、じゃ60分後に行きま〜す、とこちらも会話のトーンをあわせ(本当かな??)電話を切る。後でわかったのだが、たしかにミシュランの詳細地図にはD番号が振ってはあるのだが、確かにそこに何十年も住んでいるおじさんが知らないのももっともだと。
 片道1.2車線の素晴らしくスリルのある標高1000メートルの峠を(わざわざ)(日没間際に)越え、目指す村に到着した。なるほど納得、おじさんの英語もいい加減な翻訳日本語も正確さは欠けるものの、必要最小限は満たしているわけだ・・・とぶつぶつつぶやきながら(多分これは日本語で)天上の駐車場に乗り入れる。眺めは・・確かに素晴らしい、息を飲むように。でも緊張を強いられたドライブから開放されて、今日も無事納得できる宿に泊まることができる、という安堵感からついたため息の「呼気量」だけ「飲んだ息」かもしれません。
 さて、ところでホテルはどこだろう、通りには「何と」名前がついている。ヨーロッパのほとんどの街では通りに名前があることは賢明な皆様ならご存知かと思いますが、ここまでしなくても・・、と。例えると「谷保天神の参道から梅の咲く公園へ入る3メートルくらいの未舗装道おあるいは空間に、道真公小道」と表示されているような??
 ここまでくればどんなに探しても5分以内、歩こうにも3分以上は歩くところがない。それでも駐車場から石造の坂道が始まるあたりにいるおじさんに(英語で)道を尋ねる・・。ちょっとの間があってなにやらフランス語でここをこう行って、その先の右手か左手(え〜とこないだ苦労の末にやっと「右側」と「左側」を覚えたはずなのにしょせんは「一夜漬」だったようで肝心のときには・・まあ確率50%で左右に首を振る労力を惜しまなければいいわけだ、歩くときは)(時速90キロで走らなければならない雨の夜の街ではこの左右がわからないと・・・)をどうのこうの・・。判ったような判らないような、それでもちゃんと判ったようなふりをし(これも多分お互いの幸せのためには大切なことでしょう)、お礼をいって歩き始めた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・らちょうど23歩でそのホテルがあったのでした。(几帳面な、あるいはどうしても暇な方は、歩数と・の数が一致意していることをご確認下さい)(数えてしまったあなたもあなたですが、キーボードをたたいた私も私です)。
 確かに「坂道をスーツケースをもって歩かなければならない」し、「車でホテルの目の前まで行ける」(ただしちょっと視野が広い人の、目の前)わけだ。妙に納得だか感心して、そのレストラン(大体こういうつくりになっています、こういうホテルは・・・)入口から入る。
 ちょっとしたやり取りで(お互い何を何語で行ったかは定かではないが、日本語が登場しなかったことだけは定かであった)、部屋の鍵を受け取り、夕食の時間を決めていそいそと部屋へ。もちろん(それでいいのかどうかは別にして)大体こんな感じのホテルでは何も書かなくて住むことがおおいが、パスポートの提示はもとより名前さえ聞かれなかったぞ・・・。この「チェックイン時に何が必要か」というのは実は国と宿泊施設区分によりおそらくかなり厳密に決まりがあるはずなのだが、正直いうとほとんどの欧州国のほとんど全ての区分・等級の宿泊施設にこの23年間を通じて宿泊してきた今となっては、ほとんどその区分が区別できなくなっている。一般的に言えば専用のフロントがある「ホテル」であれば最低限の個人情報や署名やパスポートコピーをとられると思って間違いないが、個人的にな好みで言うと最近はどちらかというと「この宿」みたいなところが楽しくていい。
 夕食は思った以上においしく、もちろん量は思ったとおりたっぷりだった。

(続くと思います)

スキーとは

 スキーで滑ってきました。
スキーをしました。
スキーは借りました。
すき〜って何のこと??

 ニホンゴ、ムズカシーあるね。
それって英語なんじゃないの?
訳語がへんなのかな?村上さん。

 
 さて、スキーは何と10年ぶりになることが判明。
時差ボケで睡眠時間が短いところへ、諸般の事情から未明の集合時間で決定。
さすがに用具の準備はしておかなければ、と・・・さてまず板は?
最近見てないな〜(あたりまえじゃないの、あなた)。あそうそう物置だね。
多分一式そこにあるだろう。
 30分経過。。。やっとのことで発見した板は、薄明りのもとでもどう好意的に
見てもエッジが見事に錆付いているように見える・・・。
ブーツが・・なぜかどうしても見当たらない。
ゴーグルやグローブもどこだどこだ??
ここ何年か開かずの間になっているところも、意を決して開け懐中電灯で
照らしてみるが・・・。

 まあそんなこんなで(ってどんなこんなだ?いい加減だぞ日本語は)
まだ陽もささないうちからスケ殿のお迎えが・・・。しかしここでも
一瞬困惑の表情が・・。まだ時差ボケなのか、あれ私はここにいて迎えにきて
もらっているはずだよな〜、でも何で私の車が私を迎えに来るんだ?
冬物ブーツを買ってあげてないことに腹をたてて家出中なのに??。
あそうか、戻ってきたのかな、あれじゃ運転手は誰だ〜。

 まあそんなこんなで(いいぞいいぞ〜早く終わらせろ)最新式のセットをレンタル開始
できるというので行って見ると??何だか10年一昔じゃなくて、30年前にはもう少し
若かったろうと思える(農作業で)日焼けした顔をにやつかせたおじさんたちが受付してくれる。
まあいいや、借りるのは「おじさん」じゃなくてカービングスキーだからな〜。

 まあそんなこんなで(無言〜)そんなおじさんが人が最新式のカービングモデルを扱ってる
はずもなく「カービングスキー一号機」と「スキー博物館入り目前のブーツ」をまといゴンドラへ。
ここで格家の謎が発生。今回メンバーからスケさんカクさんが参加したはずなのだが、カクさんを
見たり話したりしたのは・・・
1.高速道路のSA
2.駐車場の車のなかで寝ている姿
3.およそスキー場には似つかわしくない休憩所で・・・
4.ゴンドラのなかで・・・

冬のベネチア

 マルコポーロ空港に降り立つのはじめて。ピアッツァローマは何度か利用しているが。
やはり霧というのか靄というのか、低くうすく水蒸気が立ち込めている。
バスで本島に移動することにするが、さすがイタリア・・・チケット売り場でも、それらしき列に並んでいる人も誰も正確なバス発着時間はわからないらしい、がたぶんここでしょうと(何となくお互いに)確認して待てばいいのだ。
 グランドキャナル経由のバポレット(水上バス)に乗り換え、駅?乗船所?で降りる。ああやはりここは来たことがある。英語で書かれた、まるで探偵小説に出てくるような指示文書通りに小さい橋を渡り、公園内を抜け右に折れキャナルは右手のリオを歩き2つめの橋を渡り、小さいカンポ(広場)を西南から入り北東に抜け・・・。鍵はちょっと古びてるけどきっと開くからね・・か。ふ〜確かに最後はやっと何とか開いたのだが。不思議なことに開くだろうかと恐る恐るやっているうちはすごく難しく思えたこの鍵も、2回3回と慣れてきて簡単に開くものと思えるようになると、実に簡単に開くわけです。
 曇り、曇り一時弱い太陽が顔を出す、曇り、曇り、朝方曇りから快晴・・・。それにしても何と美しいのだろうか。スキアボーニ河岸から眺める対岸のサンマジョーレ、右手に弧を描いて続くサンマルコの塔・・・。小さい橋を渡る毎に立ち止まり、眺め、ため息をつく。行きについたため息が、私の帰りを待つかのように同じ橋のたもとにずっとたたずんでいたかのよう。たくさんの細い路地、リオテッラ、ソトポテルゴ、賑やかなショッピング通り、橋・・。何気ない路地やちょっと入ったところにある、地元の人しかいないようなBARでスピリッツアペロールを飲む。太ったおじさんも、格好いいお兄さんも、さえないおじさんも、おしゃれなお姉さんも・・みんな生き生きと楽しそう。チャオ、チャオと声が飛び交い、頬を寄せ合う挨拶が交わされる。
 イタリア料理はおいしいといわれて久しい。が、少し違うのではないかと感じたこと。おいしいのは料理、ではなく素材・・。野菜、肉、チーズ、生ハム、パスタ、ワイン・・・どれも安くておいしい。観光地以外の何者でもない今のベネチア、レストランの評判は芳しくない。が、街中の高級店で買うゴルゴンゾーラドルチェも町外れのコープで買うゴルゴンゾーラも、正直言ってミシュラン2つ星レストランでサーブされるそれに全く遜色ない味だ。
 何度も街に通っているうちに何となく気になる感じの店、BARやレストランやジェラトリアがある。そして入ってみる。思ったとおりに、思った以上に心地いい内装やおいしい味、いい雰囲気でくつろげる店・・・。気がついてみると広いこの街の中に行きつけの店と広場と教会と、かならず立ち止まってしまうビューポイントと、ショーウィンドーに美しい色の服やマフラーがかざられた店・・・そういったものが点在し始める。そんなに多くなくていい。この路地からここを曲がると、そうそうこの小さい広場にでたっけ・・あれここはこないだの夜に向こう側から来たところだろうか、そうに違いない・・何年か前に来たときもそういえばやっぱりこの店にきたんだったな・・・、そんなことを思いながら、時々は地図やガイドを眺め路地を歩いていく。そろそろのどが渇いたな〜、レストランでワインじゃ重いからBARで軽く一杯飲もうか。