ヨーロッパ最高所の鷲巣村

ここはヨーロッパで最も標高の高いところにある鷲巣村、とガイドブック的には表現されるサンタニェス。この鷲巣村、という日本語の意味は(多分)海を見下ろす断崖(あるいは、のような、ところ)にぽつんと(あるいは、比較的ぽつんと)位置する小さい町や村、となるでしょうか。
 コートダジュールで一番有名なのは皆さんご存知のエズですね。ちなみにエズは大きく分けて3つあって、シュメール、ヴィレジ、コル。順番に海沿い、村、峠。
 (尚、全文通してフランス語の知識は皆無に等しい私の感覚的推定、なのでどなたかフランス語に詳しい方がいたら、是非訂正や修正をお願いします。私にとっても多少のフランス語レベルアップになりますので。)
 某K氏の前の会社などがだしているガイドブック的に有名なのはヴィレジのみ。大体ここが標高400メートル前後、かの有名なニーチェが散策した小道や、おしゃれなお店やらがたくさんあるあたりです。3週間ほどの滞在中、フランクフルトの空港以外で、間違いなく日本人らしき人を目撃してしまった(?)数少ない経験もこのあたりでした。ちなみにニースあたりを歩いていて見かけるアジア人は、8割がた中国系でしょうか。季節柄わずかに卒業旅行らしき日本人もいたような。
 でサンタニェス、日本語表記される機会の少ない村なので今日から日本での表記は「サンタニェス」で決定です。ここが約750メートル、行って驚いたのは本当によくもまあこんなところに・・・。でも結局個人的には結構気にいって、延べ5泊ほどしてきたので、今や見慣れた風景になってしまいました。最寄の街はイタリア国境のメントン。ここからちょうど10キロ、細〜い道を登っていくのが一番判りやすい道なので、結局この道を(懲りもせず)朝夜と10回は走ったことになるようです。(ちなみに車で、です)
 さて、エズ(コル)でレースを見た後(Paris-Nice)、いくつかの宿泊候補地(マティスが暮らしていたバンスのアパート、有名な教会のすぐ隣にある、その教会が運営する宿泊所、どちらも電話がつながらなかったりであきらめて)のなかからここにある数少ないホテルに電話すると英語が通じたのでした。あきらかに乏しい語学力で訳されたと思われる、3行ほどのガイドブックでの紹介に「急坂をのぼるので、運動嫌いな人には無理です」などと、訳した本人が意味がわかっていないしもちろん行ったこともない場合の典型のような、ぎりぎり誤訳じゃないだけの意味不明な文が載っていたので・・。「車でホテルの前まで行けますか?」とおそるおそる(内心だけ)聞いてみると、「何の問題もないよ」とのこと。息つぎするふりをしている間にこの意味するところの幅(まさにその言葉通り〜多少その通り〜まさか??)を判断しなくてはいけない。あの紹介文との整合性も含めて。まあ結論は行って見なければわからないが、スーツケースをかついで10分もあるくようなこともない、だろうと。で、調子にのって(?)今ここにいるからちょっと待っててもらって地図を出して道を確かめたいから、とそのおじさんを電話口で待たせる。さっきまで今日泊まるところ(どこでもよければもちろん困らないのだが、いくつかのこだわりを見たすような宿)に関してやや心細くなっていたのに・・・。で地図上ではどう行くかを理解できたが、もちろん英語で話せるなら念のために道路の番号を順に聞いてみると・・・「そんなの知らないよ〜ん」・・・。しばし無言になったが、じゃ60分後に行きま〜す、とこちらも会話のトーンをあわせ(本当かな??)電話を切る。後でわかったのだが、たしかにミシュランの詳細地図にはD番号が振ってはあるのだが、確かにそこに何十年も住んでいるおじさんが知らないのももっともだと。
 片道1.2車線の素晴らしくスリルのある標高1000メートルの峠を(わざわざ)(日没間際に)越え、目指す村に到着した。なるほど納得、おじさんの英語もいい加減な翻訳日本語も正確さは欠けるものの、必要最小限は満たしているわけだ・・・とぶつぶつつぶやきながら(多分これは日本語で)天上の駐車場に乗り入れる。眺めは・・確かに素晴らしい、息を飲むように。でも緊張を強いられたドライブから開放されて、今日も無事納得できる宿に泊まることができる、という安堵感からついたため息の「呼気量」だけ「飲んだ息」かもしれません。
 さて、ところでホテルはどこだろう、通りには「何と」名前がついている。ヨーロッパのほとんどの街では通りに名前があることは賢明な皆様ならご存知かと思いますが、ここまでしなくても・・、と。例えると「谷保天神の参道から梅の咲く公園へ入る3メートルくらいの未舗装道おあるいは空間に、道真公小道」と表示されているような??
 ここまでくればどんなに探しても5分以内、歩こうにも3分以上は歩くところがない。それでも駐車場から石造の坂道が始まるあたりにいるおじさんに(英語で)道を尋ねる・・。ちょっとの間があってなにやらフランス語でここをこう行って、その先の右手か左手(え〜とこないだ苦労の末にやっと「右側」と「左側」を覚えたはずなのにしょせんは「一夜漬」だったようで肝心のときには・・まあ確率50%で左右に首を振る労力を惜しまなければいいわけだ、歩くときは)(時速90キロで走らなければならない雨の夜の街ではこの左右がわからないと・・・)をどうのこうの・・。判ったような判らないような、それでもちゃんと判ったようなふりをし(これも多分お互いの幸せのためには大切なことでしょう)、お礼をいって歩き始めた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・らちょうど23歩でそのホテルがあったのでした。(几帳面な、あるいはどうしても暇な方は、歩数と・の数が一致意していることをご確認下さい)(数えてしまったあなたもあなたですが、キーボードをたたいた私も私です)。
 確かに「坂道をスーツケースをもって歩かなければならない」し、「車でホテルの目の前まで行ける」(ただしちょっと視野が広い人の、目の前)わけだ。妙に納得だか感心して、そのレストラン(大体こういうつくりになっています、こういうホテルは・・・)入口から入る。
 ちょっとしたやり取りで(お互い何を何語で行ったかは定かではないが、日本語が登場しなかったことだけは定かであった)、部屋の鍵を受け取り、夕食の時間を決めていそいそと部屋へ。もちろん(それでいいのかどうかは別にして)大体こんな感じのホテルでは何も書かなくて住むことがおおいが、パスポートの提示はもとより名前さえ聞かれなかったぞ・・・。この「チェックイン時に何が必要か」というのは実は国と宿泊施設区分によりおそらくかなり厳密に決まりがあるはずなのだが、正直いうとほとんどの欧州国のほとんど全ての区分・等級の宿泊施設にこの23年間を通じて宿泊してきた今となっては、ほとんどその区分が区別できなくなっている。一般的に言えば専用のフロントがある「ホテル」であれば最低限の個人情報や署名やパスポートコピーをとられると思って間違いないが、個人的にな好みで言うと最近はどちらかというと「この宿」みたいなところが楽しくていい。
 夕食は思った以上においしく、もちろん量は思ったとおりたっぷりだった。

(続くと思います)