欧州便り⑤

 MTB三昧の日も今日で最後。どこかいいコースはないかと夕食時に地図を見ていて、55キロ周遊ルートに寄り道オフロードを加えたコース想定に決め、念のため地元に住むMTB乗りの彼にも確認。私でもここの道乗れるかな?などと。
カンポロンゴはオフロード利用で迂回、ポ゚ルドイはそのまま、下りはオフロード(途中のこれぞドロミテの絶景、という芝生で一休み、ついでにカフェでエスプレッソ)、セッラはそのまま、下りはオフロード、ガルデナへは期待のオフロード。しかしイタリア人のアドバイスよりは自分の地図読みのほうが正しかった・・。こんなに赤い等高線が幅狭い川沿いで、本当に乗れるの?乗れませんでした、全然。歩くのもやっとの急勾配をMTBを押し上げて・・でもこんなのもこういったエリアでは当たりまえに思える。やっと峠手前でおなじみの舗装道に合流、さすがにエネルギー枯渇寸前だ。そのうえ怪しい雲が見る見るうちに前方の山々を覆い始める。何とか小雨のうちに最後の下りを終え、残すはあの劇坂を含む1キロだけ。しかしここですさまじい雷鳴とともに土砂降りの雨。そして気温が一気に下がり、夏とは思えない寒さ。まあ2000メートル近い山の中と思えば不思議ではないのだが・・。かけ込んだ教会の軒先から正面に、本日の予定第二候補だった岩山がそびえている。しかしこの激変した天候であの頂上にいたら・・・ちょっと恐怖を覚える。
 小止みになったなか走り出し、フロントに再びいた(とっても)かわいい子に(本当は)「いやー最後は雨に降られたけどドロミテ周遊ルートを満喫してきたよ、いいところだよね本当にここは。コースはきついけど日本じゃ結構走っているからほら?全然疲れてないでしょう??」などと軽く話しかけたかったところだったが。。が、寒さと疲労とでつたない英語を組み立てて「あの〜すいません、チェックアウトは今日したんですけど、えーと車を前に停めてあって・・でちょっと濡れちゃったので中で着替えさせてもらえるかな〜」と言うのがやっと。(トホホ(って死後のような・))着替え終えて水も飲んで少し余裕を回復「ここはいいホテルですね、また今度来ますね。どころであなたはここのホテルの人ですか?」などと話しかけた後、きっとここにはまた来ることを確信しつつ名残惜しくも一路フランクフルトへ向けて4輪走行への出走を開始する。帰国のフライトはフランクフルト発、ここはそこに「空港があるから」寄るだけの都市・・。今日は南ドイツのアルゴイ地方で1泊だ。旧市街地の駐車場所発見はたいへん難しい。今回はホテルで部屋を確保する際にフロントで車のことを相談、するとなんとその子がどうやら同乗して案内してくれるらしい。こういうところがドイツ(ドイツ人)のよさかな〜、フランスではまずあり得ないし、イタリアだったらこっちが警戒しちょうからな・・。
 帰国の日。ちょっと例えは違うこういうとき思い出すのはソフィアロ-レンとマストロヤンニ主演の「ひまわり」の1シーンだ。フライトは19時発。ゆっくりと雨のなか美しい旧市街散策。いい街です。スーパーでゆっくり買物。雨も止みそうにないが近郊の地図にはないような田舎道を走る。小雨に煙る緑の丘、ため息の出る美しさ・・。比較のためにあえて例えれば、6月頃の北海道の美瑛、十勝あたりに似ているか・・。さすがにいつまでも「牧場脇の名もなき美しい道」を走っていてはフランクフルトまではたどりつけない。ミシュランでちゃんと確認できる主用道(でもできるだけ景色のいい道でお願いね)へ合流。それでもこの雨のなか、郊外の一般道は制限速度90キロなので「80キロなんかでトロトロ」走ると後続に車がつまりどこで追い越しされるか一瞬も気が安まらない。流れに乗るため仕方なく100キロ位で走ることになる。もう少しゆっくり走って景色も眺めたいのにな。それでもさすがにドイツ(ってまたまた)、追い抜き方にはマナーを感じることが多い。これがイタリアだとわれ先を争う犬や羊の群れ同様、マナーというより「前に車がいる=一瞬でも隙があれば抜かなければならない、男がすたる(女性もここに加わるのですが適切な表現が日本語にはありません、多分イタリア語にはあるのでしょう)」という感じでしょうか。もう本能的に抜いてくる車が(も?)多いのです。片側が断崖絶壁だろうが霧で視界が利かなかろうが・・・ぎりぎりの幅で追い越される覚悟が必要です。多摩川サイクリングロードをゆっくりと散歩していて突然右側から時速35キロで追い抜かれるおばさんの心境でしょうか、これは。幸い彼らは運転も(それなりに)うまいのでじっとしてやりすごす、かイヤなら運転しない、が正解です。
 さてドイツで最後の昼食、ちゃんとレストランで食べましょう。シグマリンゲンという美しい響きに誘われよった美しい城のある街。ここで最後の地図熟読。この時点で、ちょっとあまり時間がないなと気付く。水代わりとはいえビール効果による赤ら顔も「日焼けのせい」ぐらいに覚まさねばいけないし、フスボールバルトキルヘとバカンス気分真最中のこの国。自慢のAUTOBAHNが空いているはずもなかろうし・・。多少の作戦修正、高速ではそれなりのハイペースを維持すること、空港まではあと1回だけSA休憩、出して(トイレ)入れる(ガソリン)のみ。「出口や入口を間違えて戻る」は不可だ。「ほろ酔い気分で地図を眺める」から「真剣に地図のポイントポイントを頭に叩き込む」モードに。
 14時30分発。シュツトガルトに近くなると雨降り、週末の夕方、思ったよりも車が多い。かって知った甲州街道ならどちらの車線が流れるかなど熟知しているのだが・・・。悲しいけれどここは異国の地。大人しくいつでも車線変更できるところをキープしなくては・・標識見落としによる方向間違が最も時間をとられるのだ。それでもまだ間もなく高速に入るあたりだ、高速に入ればフランクフルト近辺までは流れるだろう、150キロペ-スキープはしんどいが到着後はあとは気楽なものワインを飲んで寝たい寝るぞ、だからここからは集中して・・・などとイメージしていたもくろみが早くも崩れ去る。ここは首都高か、はたまた夏休みの中央道相模湖ICか?渋滞、合流車線毎に車が列をなしているぞ。対策修正、SA休憩をパスし10分確保だ。渋滞を抜けたら左車線を150キロキープ、フライト1時間前には到着できる。レンタルカー返却場所(通常駐車場内にあります)までの車線にたどりつくまでのイメージトレーニング開始。過去に一瞬の標識判断ミスでうんざりするほど空港周遊ドライブを強いられたこともあるので。。あれは悪名高い(勝手に自分で命名)パリ・オルリー空港だったかな。全くフランス人というのはデザイン優先で利用者の使いやすさなど・・・。