欧州便り④

 滞在予定ホテルのあるコルバラアルタバディアに到着。このあたりは冬のスキー場として有名、コルチナダンペッッツォから西側は周囲40キロ位のいたるところに素晴らしいゲレンデが広がっている。日本で例えれば草津、志賀、野沢エリアがゴンドラやリフトで接続され自由に滑り回れるれるような感じ。夏に来たときは登山靴を持参し、山を歩いた。今回は考えた末、ついに(?)クリート、ペダル、ヘルメット、ウエア多数と山歩き一式用具をを持参することにした。結果から言えば自転車魅力に軍配が上がった。素晴らしい山々は主に眺める対象に、MTBで4日走ることになる。
 到着してますはレンタルバイク屋へ。料金交渉とペダル付け替えをする。そもそもマイペダルを持ってきている、というこで(多分)(そして我ながらも)妙な日本人だ。が、自転車は結構乗れるらしいという好印象を与えた(はず?)。さすがイタリア人、保証金もパスポートコピーもいらずジャポネ?ナカムラ、ナカータとご機嫌に話しかけられてレンタル終了。少し試走し空気が甘いよおじさん、と空気入れを借りて舗装道路用にハイプレッシャーに。次がホテル。前回利用しその素晴らしさを体験済みのホテル、空き状況と料金は事前に確認してある。MTBを積み込みフロントに到着。(とっても)かわいい女の子に2泊泊まりたいと伝えると、もしかしてメールで問い合わせをした人ね?と(多分そのようなことを、多分英語で・・)応対してくれ、早速バルコニー付の眺めの素晴らしい部屋へ案内してくれる。これで準備完了。早速足慣らし(というより日本では乗ることないMTB慣らしか)にどこまで走ろうかな〜と。結局夕立にも降られたが2200メートル位の峠を往復。といってもホテルの標高が・・乗鞍夜鳴き峠(ってほとんだ誰も分かりませんね)くらい在るのでたいしたのぼりではありません。
 翌日午前中はホテル主催のMTBツアー(といっても参加者は結局私だけ、希望を言って行きたい所にコース変更してもらう)で標高差700メートルの山道をのぼって有名な教会に行ったり、ゴンドラにそのままバイクを積んで高原にでたり。またここらの眺めは・・・素晴らしいの一言。一面雪化粧も捨てがたいけれど・・。日本での自転車環境と比べるとまさにパラダイスです。戻るとちょうどホテル主催のランチビュフェがテラスで開催中。せっかくだから、シャワーで汗を流し早速参加。いきなりシャンパンや赤ワインを勧められ、午後は1周55キロのこの地域で最高の山岳ハイライトルートを走るつもり(も)ある。量を控えめにしつつ、こういう楽しい雰囲気は皆様に付き合うほうがいいですね。座ったテーブルは、イタリア語しか話さないイタリア人夫妻、少し英語とイタリア語も話せるドイツ人夫妻に私。素晴らしい天気と、山々を眺めつつほろ酔いかげんで3各国語まじえての会話。ドイツ人おじさんは何だか自家用機を操縦するらしいし、イタリア人マダムはソフィアローレンのような典型的なゴールド派手系。あとでしったがお酒をあれこれ勧めてくれたおじさんが翌日の山岳案内人だった。部屋で酔いを醒まし(アルコール分解酵素不足の私においてはそう簡単には褪めないことは承知のうえだが)4時頃から出発して周遊ルートを走りきる。2つめの峠くらいまではアルコールが抜けていないので、これじゃ飲酒峠登攀罪だなどと思いながらただでさえのぼりで紅潮する顔が更に赤らみ・・・。ペースは抑え気味、そうでなくても疲れているのでペースは抑えてあるのに・・(自分のロードを無理して持ってこなくて良かったと感じた時、その①)幸いマウンテンのギア、センターでも十分楽できるぞ・・。メーターも心拍計も目標タイムもないから・・ちょっと遅くても誰も困りません。サッソルンゴを正面に眺めるカフェで颯爽とコーヒーブレイク。気分的には更にビールでも行きたいところだったが。2000メートル超級峠を4つ越え、ようやくホテル入口へたどりつく、もう酔いはさめ冷や汗の出る涼しさだ。で、わかっているけど最後のこの上りが劇坂(自分のロードを無理して持ってこなくて良かったと感じた時、その②)、恥ずかしいけど?インナーの最軽ギアです。
 夕食時には隣席のドイツ人夫妻とあれこれ話をする、妙に意見があうのですドイツ人とは(大体が南部のドイツ人、ミュンヘン、シュツットガルト、フライブルグ・・ですが)。
 翌日は自転車ばかりというわけにもいかないでしょう、こんなに素晴らしい山々に囲まれて、という訳で半日だけの山歩きガイド(これもホテルのおじさんが兼務)と一緒に山を歩く。しかしこのアルベルトおじさん、年は60台だろうがのぼりの早いこと。登り始めて30分、日ごろ峠ののぼりで人並み以上に心肺機能と(自転車用)脚力を鍛えているはずの私にもこれはきつすぎる・・。もう少しゆっくりにしてくださいおじさん、といわねばならない。でもアルベルトおじさん、実は英語は全く話さないらしく、イタリア語、ドイツ語だけ。。。仕方なく自転車レースのグルペットで使用されるという用語を思い出し「ピアノ、ピアノ、ウンポコ」とかなんとかいい加減なイタリア語で何とか意思疎通。やっとペ-スを落としてもらう。あとで聞いたところだと、結構歩けるので驚いた・・らしい。次々と人々を追い抜き、天然の湧き水を飲んだり湖で泳いだり(これはもちろんこのおじさんだけ、標高2000メートルを越えている湖なんて冷たくて入れません)汗だくになりつつ4時間のハイキング終了。こういう時はお礼にビールでもおごるのがいいねと思い、ホテル到着後バーへ。ところが考えてみればこのおじさん、本業がバーなどの担当。てきぱきと中に入り逆にビールで乾杯だね、とごちそうになってしまった。(今日も午後また走るつもりの私はやむなくお子様用レモネードにしてもらったのだが)
完璧なアルプスの夏空、バルコニーからの眺めは「ブリューゲルの絵のように」美しい。山々と麓のまちが眺め渡せる。「雪中の狩人」これは冬にきたときにそう思った訳で。テラスで寝そべって地図を見ながら午後走るコースをあれこれ考える、でも疲れたらそのまま一眠りしてからでも日が長いから大丈夫。目の前のカンポロンゴ(峠の名前です)への道を平日というのにサイクリストたちがのぼっていく。ロードとマウンテン半々か。10何年か前にジロデイタリアを見にこのエリアにはじめてやって来たときの感動が蘇るな。あれはこの町がゴール、スタートでINDURAINがその日のステージも総合優勝も飾った93年だったか・・。夕食時にオラーと挨拶してくれたこと、サインをしてくれたこと・・、選手に対してあれ以上の感動を味わうことはないだろう。