欧州便り③

 睡魔と闘いながら国境近くの静かな街へ到着、夜も遅いなか適当な宿泊先を勘を頼りに探す。質実剛健という言葉がぴったりのドイツ女性ポリスからの不審車尋問(車に乗っているだけで「不審者」からは格上げされてます?)を受ける。こんな夜中に怪しげな車が寄ってきて・・って思わずこっちが不審者尋問をしそうになりました。何の用なんだ?って。おっとここはドイツ語圏だ、ドイツ人向け笑顔(ってそんなのありません)で懐中電灯で照らされた緊張もなんのその、怪しいものではありませんとアピール。ふと機内でたくさんいただいた赤ワイン、などが検出されたうえに不審者として連行されたなら・・などという思いもよぎる。
 あれはスペインで、みんなで仲良く100キロ位で安全運転していたのに外国人の私だけスピード違反で停められ、有無を言わさずパスポートを没収、金を払うまで返さないといわれる。こいつ偽警官じゃないか?とも思うが(もちろん本物のスペイン国家警備隊?でしたが)本物だろうが偽者だろうが、海外で銃を持っている人にパスポートを没収され金を払えといわれたら・・払うしかありません。泣く泣く近くの大きな街まで車を飛ばし(って制限速度内でね、ここでつかまったら今度はクレジットカードを没収されて永遠に私は帰れなくなる?)、CASHデスペンサ-でかなりの額(キシリウムの1本定価位か)をおろし、おいおい私は外国人旅行者なのよ・・あんたらみたいにこの辺の道に詳しいわけでもスペイン語が話せるわけでもないのよ、あの小高い坂道に確実に帰れる保証なんかないじゃないか・・考えれば考えるほどこの強引なやり方には腹が立つ。が、私は知っていた。スペイン警察は怖いのだ。あの内戦時代には何しろ・・・。数々の困難を乗り越え、ペセタの札束を持ち、待ち合わせをしている彼のもとへ車を走らせる私、ほほを紅潮させ緊張感からか期待感からか胸は高鳴り。。。笑顔で握手でもしてやろうか?などとも思ったが・・・今やよく覚えてはいない。
 ときはめぐりここはドイツ・・。やはりドイツ人、もう少し民主的ですね(少なくとも日本人には・・)。それにしても霧のかかった湖畔に近い夜中・・まるで大戦中の映画シーンのようだな。何しろトランクには怪しい工具や液状オイル、普通の善良な観光客はもたないような〜。更にこんな時間にいったい何事?といった感じの老婆の冷たいナインの声をインターホン越しに聞いてもめげず、ようやく全館消灯寸前のガストホフを発見し、最後の力を振り絞り(?)笑顔と善良な日本人であることを全身に漂わせ、希望通りの部屋を確保。こんなときにもちゃんと決める前に部屋を見せてもらう自分って、すごいな?こういうときのために(じゃないんだけど)空港で買ってあったフランケンワインと生ハムをつまみながらようやく眠れる安心感につつまれる。でもTVをつけるとツールのニュースなどやってないかな〜と落ち着かない。
 朝、バルコニーからは正面にあのお城が見える。人の多い観光地を避ける私は行きませんが、なかなかいい感じだ。素晴らしい空気のなか、朝の散歩。自転車があればな〜とつい思ってしまう。一路国境を越え、オーストリア側からドイツ最高峰ツインピークを眺める。時差の関係もあり、ヨーロパでの朝はことのほか気分がいい。インスブルックからブレンナー峠を越えイタリアへ。トラックが税関のため渋滞をなし、あやしげな両替商が並んでいたオイロ(ユーロ)導入前の峠の風情が懐かしい気がする。今や標識を見落とすとイタリアに入ったことさえ気がつかない、例えれ東京都・神奈川県の境界線でもある大垂水峠にまで格下げ、といったところか。
 ドロミテエリアへの入口に到着。前回は大胆にも(無謀にも)12月に2000メートル級の峠越えをした(車輪は・・4つ)。雪質がいいのか運転がうまいのか大きなトラブルもなく走行したのだが、スノータイヤをリクエストしたはずだがどうもタイヤがしょぼい。ガススタンドのおじさんに身振り手振りでこれってスノータイヤ?じゃなそうに見えるのですが??などと聞きながらも間違いなくツルツルノーマルタイヤだったのだが。
 季節はめぐり、今日。最高の夏空とドライな路面が歓迎してくれる。