千葉

 この季節、ここ数年は山中湖、越生多摩川などに浮気をしてきた。そろそろ千葉のよさを思い出しても良かろう。海岸線、丘陵、陽射しの暖かさ、変化あるアプローチ、距離を走れるのでLSDにぴったり・・・。
 非常に寒い一日となりそうな予報が出ているが、雨と強力な向かい風のどちらの心配もないのでこの日を決行日とする。7時にスタートするための秘策(早く寝る、ウエア準備やチェーンオイルを済ます、目覚ましをかける・・って秘策でも何でもありません)を済ませる。日の出後の外気温はおそらくマイナス4度か。今年に限って言えば、かなり寒いが一番寒くはない朝、か。走り出して3分後、指先に凍傷の危険を感じる。10分後信号停止して息を吹きかけ、凍傷は大丈夫か。15分後、多摩川にでて我が目を疑った。一面真っ白、雪がふったの??しばらくの沈黙の後、どうやら霜が冷え込みで凍ったらしいと気付く。
 追風に励まされ、順調に距離を稼いでいく。あくまでも房総半島に入ってからが今日のメイン、そこまでの90キロは「なかたことにできる」くらいの軽い疲労度でこなしたいのだ。(=美ヶ原攻略法)。丸子橋近辺では意地でも落車しないよう、気合を入れた。気温が低い分、海も色が美しい。
 64キロ経過。
ここは三浦半島一周の際に、「海をみながら早めの休憩」をするポイントだ。今日は「フェリーでの40分」という貴重な休憩時間が確保されているので、ここでは5分で携帯補給をとり、ボトル給水、トイレをすませてすぐ出発。朝早くでたことと強烈な冷え込みのおかげでとにかく海がきれいだ。小さな港、横須賀への隧道アップダウン、観音崎近辺のわずかなのぼり・・、全て先週より心地よい。このへんからの海の向こうに見える富士山もなかなかです。乗船予定のフェリー出航時間と、予定到着時間を読んでいるうちに予定以上に早く着くことは間違いなく、ちょうど1本早い便に間に合ってしまいそうだ。こういうとき、慌てて時間を気にしだすとえてしてよくないもの。落ち着いて5分前に到着、さっと切符を買い船内へ走りこんで乗船完了。この感じがいいですね。92キロ、休憩5分、走行中時速27.0(追風のおかげ)。暖かい船内に席をとり、ゆっくりと早めの昼食補給と地図確認。続々と前を横切る船舶をさけながら進む。まだ走行感覚が残っている、というか房総半島走行に向けて無意識のうちの途切れないようになっているのだろう。それにしてもこのゆっくり座って海や対岸や船をながめていられる時間はうれしい、ロングランの間に確実に休んでいい貴重な時間なのだ。
千葉県上陸開始。海岸線を5キロほど南下し内陸へ。何とものどかな日本昔話風の景色がひらける。走りながら、ふと本当にここは千葉県だよな?と思う。一度通ったことがあるような、はじめて通るような道。気温は予報どおりかなり低いまま、でも日差しが暖かい。ここまで体調に不安要素はない。が、寒さと乾燥のせいだろう、のどと胸が乾く。まっすぐ御宿へでずに少し先までいく。分岐点にふと振り向くと、小さい神社がありいっぷく。なぜか梅の季節の高麗神社を思い出す。共通点は日差しの暖かさと静けさ。そして外房の海、久しぶりですね。ここから向かい風、海の色がとてもきれいだが少し疲れを感じる。車の多い国道をはずれ鴨川の海岸線へ。ちょっと欲張って港の行き止まり、戻るのもかったるいので階段をかついでのぼり道路に合流。そういえば伊豆でも似たようなことがありました。海沿いをできるだけ走りたい、と速く走れる簡単な道、とは相反する。この見極めには熟練を要する。今度は遅めの昼食補給。せっかくなので海岸線に下りて食べる。ちょっと多すぎるか、と思ったが少しももたれずにお腹に入る。このちょっとした感覚のずれ(ちょっと補給を取りすぎている、と考えている「脳」と、すんなり吸収した「内臓」との)があとでもう1回あらわれることになる。そう、自分とは「脳系」なのか「内臓系」なのかについてはいりいろな見方があるのです。向かい風にやや重い気分、お花畑に青い海がそれを癒してくれる。この関係も「走ってカロリーを消費」「その分カロリー補給」「またその分だけ走れる」といった「鶏が先か・・」と通じるところがある。
海岸線のサイクリングロードに入るとすぐ目の前が海と砂浜、でも路面は悪く向かい風がきつい。国道一直線だとペースはあがるが海があまり見えず車もやや多い。いつか寄ったのはどの花畑だったかな?などと考えながら進む。10年ほど前と比べると道もよくなったが車も増えている。野島崎東側のこのエリアは最も静かだったのだが・・。今日最初で最後のロードレーサーとすれ違う、何だか多摩川グリーンラインかで見かける人たちだったようだ。4年前の同じ時期に走ったときはとてもきつかった海岸線のちょっとしたのぼりも今日はまだ問題なくこなせる。国民休暇村の前で残り距離とメーター確認。この向い風基調のなかひたすら前傾姿勢でペース維持をすれば何とか間にあうフェリーの時間か。しかし200キロ以上走って最後の1時間半、それはあまりにも芸がない?(というより辛すぎます・・)1本遅らせてゆっくり夕陽でもみながら走りましょう。持参した補給食を全てとり、最後のボトル給水とトイレ。さああとは時間もたっぷりあるし、もう休憩もいらないし、何の問題もない・・・はずだった。走り出して20分後、館山市街地を右手にみる海岸線にさしかかる。あと25キロ、1時間だ。ここで急に「お腹」が反乱を起こした。ぱっと目に入ってきたファーストフード店の看板。足が突然いうことをきかなくなった。脳指揮系統はここで補給が必要とは全く考えていない。が、時間的にも(もちろん経済的にも)ここで休んでも困らないことを知っている「内臓系」はほんの数秒で完全に指揮権を奪い取っていた。我ながら感心する鮮やかさだった。ここ数年入ったことのないミスタードーナッツ(館山ショップ、16時39分)。ここで食べた2つのドーナツとイチゴシェーク(のようなもの?)、悔しいけど「おいしい」と思う間もないくらい「おいしかった」。完全に消費カロリーの読み違い。例年より5度も低い寒さ、乗り込み距離の少なさ。この2つだな。まあ最後に思わぬ寄り道(というより完璧な補給というべきか)があり、リズムが途切れた。5時15分、伊豆半島に沈む夕陽を左手に見ながら走る。美しい、が同時に冷え込みが体にしみる。
日もすっかり暮れたフェリーに乗船。つまみを食べながら暖かい船中でのむ一缶の黒ビール。悔しいけれどこれは1万円の赤ワインより間違いなくおいしいのだ。一気に酔いが回り、わずか35分ながら2度ほど完全に熟睡していた。ふと目が覚めると周りの人が下船の準備をしている?。ふと目が覚めると回りに誰もいなかった。中央線でいえばふと目が覚めると立川、次に目がさめたら高尾駅、といったところか。我に返り暗く寒い外へ走り出す。ここからは電車のなかでも2度と体が温まることはなかった。東京駅、やけにスノーボ−ドをもった人たちがいるけど何かあったっけ?ああそうかそういう季節でした。輪行袋と冷え切った体が寂しげでした。
走行合計(駅までを含む)230キロ。