それでも

それでも最悪の状況、下りも雪で乗れない事態は免れそうだ。こちら側はほとんど雨だ。気をとり直して、とつい書いてしまったがそんな「取り直せるような気がないままで」と書かなくてはいけない。ドナドナドナドーナー、屠殺場に引かれていく牛のようにというのもよさそうだ。頭の中に、20分プラス最大5分でたどり着けるはずの「屠殺場」ならぬ「極楽の湯」だけを描いて。そう俺は牛なんかじゃなくロードレーサーなのだ。しかしどういきがって見ても寒い、寒いというより痛い、冷たい。下りはじめて2分で、かろうじて残っていたドライ部分が全てウエットに、ずぶぬれになる。こうなるともう何も怖いものがない、スリップや事故だけに注意を集中する。ブレーキレバーを握る手がかじかんでほとんど感覚がないし、くるぶしから下はときどき見ないと峠に置き忘れたかと錯覚しそうだ。そしてついに全身寒さでがたがた震え始め止まらない。こんなに路面抵抗のないPANTANIヘッドのような路面でフルサスでダートを下る体験ができるなんて楽しいな。でも寒くて死にそうです。あーこのコーナーを曲がってつりぼり館がある、ここから峠まではいつも15分のぼるよな、あーヤマザキだ、ここも道の駅ができる前はよったけどな、よくつぶれずにがんばってるな、おっとこの橋の上はちょっと凸凹があるから30センチ右によけるんだったな、おっと今抜いていった車があの小道を左折しようとしたら絶対止まれないな・・・。

まるで三途の川をわたった時のようだ。道の駅まで2キロの見慣れた標識だ、あーあと4分だ、あの先の右折するところは鉄の排水溝だから十分手前からスピードを落として、っと。ブレーキシューもどんどん減っていくがあと3時間なら持つな、日没が5時だから温泉には。。。あれ、何か看板がでているぞ?!本日道志の湯定休日??何冗談言ってるんですか。土日は休みなしでしょ。全く、悪い冗談はやめてくださいね。人も車も、まさにひとっこ一人いないなかひとり2役の自分。もう思考回路も止まりかかっていたが最後のひとがんばり、まてよ今日はまさか・・平日だ。。。

雪山で遭難するのはこういうときだなのだろう。絶好調の出だし、何の心配もない天気予報、難度は高くても隅から隅まで知り尽くしたルート、どこで休めるかエスケープはどうするか・・。そこに油断が生じ、ちょとした判断ミスと雪だるまが転がるように重なっていく不運。そして最後の頼みの綱である、生き返るための「温泉」が閉まっている!!!