DAY3

登場人物:ヤングベテランエース(YBA)、オールドニューエース(ONA)、クールヤングアシスト(CYA)
今日は山岳コースで新旧両エースをアシストし、無事ゴールまで運ぶ役割だ。
多摩川にかかる橋で、ちょうど朝もやから昇ったばかりの朝陽が見える。
エースに致命的な忘れ物がないか、さりげなくチェックを入れる。

予想通り(って失礼な!)きっちり2回Uターンをした後、中央道を快調に走り昨年のコース
と同じ駅前で最後の準備。スタート地点へ移動。
この移動中に、今日の最後の勝負どころになる上り坂を通過する。
全体のコースプロフィールとあわせ、さりげなく両エースに情報を発信するが、ちょっとさりげなさ過ぎたかもしれない。
あるいはエースはコースなど気にしないのかもしれない。

スタート時刻9時から遅れること40分。
コース経験のあるONAさんのウエア・防寒対策は心配ないが、このコース初めてのYBAさんのシンプル装備が気になる。
亀のようにゆっくり上るか、トッププロなみにがんがんいってしまうかしない限りこの時期のこのコースでシングルな装備は厳しい。
背負いバッグに予備の防寒着も積み込み、先導してスタート。

それにしても今までにないほど暖かい。
心配される信州方面の天候悪化もまだしばらく大丈夫そうだ。
まずは最初の600UP。ここは序盤過ぎから2キロほどの直登が10%超級が続き、きつい。
ペースを落としても少しずつ体が温まってくるのがわかる。
じわじわと汗が出てくる。早速汗をかかない、肌寒いくらいのスタイルに調整し、のぼり続ける。
抑え気味のペースに耐え切れなかったYBAさん、途中から軽やかなダンシングを見せ前を引き始める。
9月のキノコ、水浴ランよりもう一段調子をあげているようだ。
ONAさんはいつもの通り、楽しそうだ。これはYBAさんが指摘するように「かわいこぶりっこ」なのだろうか?
勾配が緩くなるところではアシストCYAが前を、急になるとYBAさんが前をと、まるで山岳コースでのUSPやLIBERTYなみのローテーションだ。
とすると、今日のエースは前にでないONAさんだ。
最初の1級ポイントに到着。予想以上の気温と、ちょっと速めのペースで少し汗が乾いていないが、素早く防寒用のウエアを着込んで問題ない程度だ。
半そでから一気にアーム、レッグ、ウインドブレーカー、防風防水の上着、フリースの帽子、長手袋・・。

素晴らしい秋の日差しのなか、人も車もほとんどいない下りを楽しむ。
YBAさんは早くも大汗をかいているようで、日当たりのあるこの下りと次ののぼりはいいが、その先にまだ2つある長く寒い下りが心配だ。
少し登り返した地点で防寒着を脱ぎ、早目の補給を楽しく談笑しつつ食べる。
日差しがまぶしいほどに降り注ぎ、暖かい。太陽の偉大さを感じるひととき。気分も違います。
何気なく走りながらも、予定ルート車両通行止めとの看板を発見。その内容から95%通過可能と判断しそのまま続行。
相変わらず10%を超える区間ではYBAさんが先行、脚なりにONAさんが追いかけ併走、ところどころ抜き返したりしている。
身内の新旧エースで争ってどうする。といいたいところだが今日は身内しかいないのだ。
CYAはというと、冷めたまなざしで心拍計をみながら、前方が見える範囲で後方待機。
やはりアシストのエースたるもの、本当の勝負どころできっちり働けるよう、冷静にレースの最後の展開まで想定する力が必須だ。

寿命の長い「名選手」はほとんどが名アシスト出身、一発屋で終わってしまうことの多い最近の選手はアシスト経験が短い・・とアシスト自慢はこのくらいにしましょう。
明るい日差しを背に受けた道幅の広い道から一気に渓流沿いの狭く日陰の多いのぼりへと突入する。
2年前ここを通過した際、小さな滝の跳ね返った水が路面で氷の塊をつくっていた。
比べると7〜8度は暖かいようだ。今日最長ののぼりが続く。
さて我がチームの両エースは・・と前方を見やると相変わらず元気がいい。
序盤元気がいいのは力があるからあたりまえ、最後ののぼりでその力をガツンと発揮しライバルを蹴落としてくれるといいのだが・・と走る迷評論家ぶりを発揮しつつのぼる。
約1000メートルの標高差を12キロ程でのぼっているのだが、途中道の感じも変化があり飽きないコースではある。
工事現場では思わぬ泥道走行を強いられたが、そこを抜けて峠ゲートを通過し、本日の最高地点O高原へ到着。
名前とは違い、乙女のかわりに土木作業員が1人2人いるだけの寂しさだが、相変わらず最高のツーリング日和が心地いい。
が、YBAさんが相当の汗をかいていて残念ながらひとり地獄の下りへ突入する気配。
これは下りで手がかじかみウインドフ゛レーカーが着れず、PANTANIに大逆転された若き日のウルちゃんのパターンか。
あれ、本当は逆のはずなのにね。素晴らしい山の景色と、1年ぶりの下り応えのある非公式完全交通規制により貸切状態のルートを楽しむ。

冷えた体に、日差しのあるコーナーでの休憩が気休めになろうか、と2回ほど休憩を入れる。
なぜか後日写真を眺めるに、秋の楽しいツーリング下り、僕達楽しいな、というよりは「冬眠前のクマを深追いし過ぎ、疲労困憊、わしらはしょせん猟師だべ」・・といった感じ。
下りきったところからすぐに次ののぼりが始まる。まだ当分凍りついたままのYBAさんのためにも(?)完全武装のまま1キロほどのぼる。
ようやく温まった頃、のぼり中唯一の公式水分補給地点に到着。今回は山梨県立湧水水質向上委員の検査も無事パス、Wボトルを満タンにできた。
その後、序盤の入りがやや速かったためか、はたまた先日の作戦会議で議論された「虚像」と「巨象」とは何かについて思い巡らせていたのか、後ろ
からの息使いだけではうかがい知れないが、いずれにしても両エースとも口数少なく(というより3人とも無言)の行列となった。
この8キロは長いのぼりの3つのなかでは、物理的には最も難易度が低いのだが、あしなりに走ってきてしまうとここで一番軽いギアが必要になることが多い。

体の芯まで冷えてしまったYBAさんだが、日頃の精神修養を積んでいるだけあって無言の行列に加わっている。
本日2番目の最高地点T(Oとはほぼ同じ標高)に到着。
三者三様の休憩時間。YBAさん、俳人から廃人へ移行し、再度俳人へと復活するための空白期を味わっているようだ。
ONAさん、年の功なのかはたまた「万年かわいこぶりっこ大学生風」の面目なのか、この場にあまりいて欲しくないような貴婦人からの質疑に丁寧に応答している、笑顔で。
適切に応答できながらも知らないふりを決め込み、下りに備えたウエア選択に余念のないCYAとは人間の大きさが違う。
東屋でお湯を沸かしてい る山サイ系熟年夫婦と会話を交わす。

この先に無許可無免許の3級河川が出現していること、最後ののぼり付近の朝の冷え込み具合などの情報を得る。
YBAさんに予備の防寒着を手渡し、UCI規定アシストポイントを獲得。なぜか両方ともピンク色、色使いはちぐはぐながらも、選手の個性にマッチングしている。
こ こから何台かの車と遭遇するが、なかなか個性派ぞろい。
下ってきて車窓が開き「○○ラインってどこ?」と聞く車、小さな峠ののぼりで車体をたたいて応援してくれる車、上まで登るの?(上ってどこのこと?)と驚く車あり、退屈させない。
事前 情報通り、ただでさえ荒れた急勾配の下り区間に許可なしで川が流れていた。
4連続峠の最後ののぼりは日あたりがよく、気分までなごんでくる。
少し下って山荘前で休憩。ここからは長い下りだ。その後いつもの登り返しコースへ。

前に富士山、右に南アルプス、左には茅が岳、振り返れば八ヶ岳・・。
山好きのひとにとってはこのあたりはこたえられない眺めである。
偶然、昨年と同じ本日最初で最後の簡易補給ポイント(有料)に寄る。残念ながら日没は避けられない時間帯に突入。
最後ののぼりはしんどくなることを伝えてあったが、情報が不十分だったよう。ハンガーノック気味になったり、寒さで再び冷えたりしてしまったようだ。
最後のルート選択は一気にのぼるか知らないうちに半分のぼるか・・結局知らないうちにのぼるルートに決定。
すでに日没、暗闇のためによく見えないが、たいした勾配でないことをよく知っているアシストとしてはこんなペースしかつくれないのが情けない。
が、後ろからペースをあげるよう指示もこないので、軽いギアをグルグル回し(もうクルクル回らない)前方の灯りを頼りに走る。
最後のゴールにようやくたどり着く頃にはさすがに誰もがもう上りはいいです、という気分になっていた(はず)。

次回は是非、この最後ののぼりを最初ののぼりと同じペースで走りきるだけのペース配分を期待します。
それにしてもこのメンバーで、僅か120キロの距離に所要8時間、実走5:35分ほど、平均時速21.0K/H。

ゴール後の温泉では元気即効回復極楽飲料を準備していたが、こちらは次回へ持ち越しとなった。
配になってくる。睡眠時間もあまり取れない。