真夏の一日第2弾

シリーズ化された「真夏の一日」の第2弾。
目覚めると目の前には小さな池が広がり、その向こう側には山々がそびえている。一瞬驚こうかと思ったが、驚けなかった。昨夜からわかっていたから・・。雨はかろうじてあがっているが、今日の天気予報ははずれないだろう。曇り時々雨ところによって一時・・・。好天は約束されていない。池に面した草地に椅子を運びだし(一見)優雅に朝のひとときを過ごす。
はじめて走る道もいいものだ。
見たことのある交差点少しのアップダウンで湖へ。
ここは何度か来ているが、おすすめは東側の湖畔だ。のんびりと湖畔で一休みした後、四方の雲行きを読み今日のルートが決まる。先日雨に降られて雨宿り(兼場合により輪行のための列車待ち)でそばを食べた駅前を通り過ぎる。そのときととても似ているのだが、今日はまだ降られないだろうとの確信(ほんとは不安と期待と・・)を胸に抱き、覚悟を決めて上り始める。
 温泉街を抜けると・・。前にはカーブでもないのに道の先が見えないのぼりが待っていた。このあたりを走っていればこういった状況は「お約束」といった感じか。
劇坂が行く手を塞ごうとする・・が、もちろんふさがれはしない。道は続き車輪は回り続ける。登山道が始まる、道路の行き止まりに自転車をたてかけ、少しのぼって温泉へ入る。のぼりの汗でぬれたウエアは乾きそうもない。かわりに体の芯まで温まってから下るのがよかろう。
下り途中では手ごろな大きさの足湯を発見し、迷わず一休み。家族連れで適度ににぎわう湯に足をつけくつろぐ。
犬を連れた朝の散策・・なんかいいだろうな、青空であればさぞかし・・と思われる池でまたひとやすみ。ひとやすみ、でなくこのあたりを見るために走っているというべきか。眺望は次の楽しみにとっておけばよかろう。
県境でよさげなお蕎麦屋さんを見つけ、きのこそばとそばクレープをいただく。
くつろいだ気分とはうらはらに気の重い最後の長いのぼりが待ち構える。こののぼりを下りで始めるべきか、この順で最後に上るべきか・・スタート前に最も迷った点だ。が、これは例えれば「目白駅から田町駅へいく」のにどっち行きの電車に飛び乗るか、という問題と同じようなものだ。違いはある。「どっちだって、気の向いたほうで行けばいい」という後者と、決してそうはいかない前者。が、両方試して比べてみることができないことでは同じである。決め手は「雨に降られた状況の想定」だった。 
 そうこうしているうちに?これまた家族連れが採れたてのとうもろこしやトマトをおいしそうにほうばっている、日本の夏休み的光景が道端の産地直売店で繰り広げられている。グラスの端からチラッと眺める以外に今の私には余裕がない。これから出港する第5次南極越冬隊員のような決意に、表情のない顔で花を添えて上りに向かう。
前置きが長い分さぞかしきつい上りだと思わせながら、かなりきつい、と思い込んでいたこののぼりは意外と見かけ倒しののぼりであった。そんなのぼりでも見覚えのあるピーク付近までたどりつくと、余力のない脚や心臓が手を取り合って喜んでいるのがわかる。冷静なのは私だけのようだ。少し下りがあるので、冷えないようタオルをジャージ下に入れる入念さ。愛車2号さんが見えてくる。あたりをのどかな夏の午後の幸せが優しく包むかのようだ。